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風土と住まい

2018年3月24日
石田

この写真は重要文化財の杉本家住宅です。

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表通りに面する店舗部と裏の居室部を取合部でつなぐ”表屋造り”と呼ばれる形式の典型的な京町家です。
瓦屋根は街中で飛び火での延焼を防ぐ効果があり、
通り庭を軸とした配置は密集した街並みの中で効果的に通風を確保することができます。

対してこちらは美山のかやぶきの里の風景です。

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非常に急な屋根勾配と茅で葺かれた屋根が印象的です。
現代のように交通インフラが整備されていない時代の民家は基本的に自給自足で建築を行なっていました。
洛中のような都会でない限り瓦などの特定の職人しか作ることのできないものは手に入れることができず、近くの山で木や茅を採取し建築材料とする地産地消が前提となっていたのです。
また急な屋根勾配は雪の重みを最小限に抑えることに加え、小屋裏空間に屋根の葺き直しをするための茅を蓄えておく空間に利用されていました。

このように気候や住居を取り巻く状況によって住まいのあり方は大きく異なるものになります。

このことを和辻哲郎は著書”風土”の中で「家屋などの様式がそれを生んだ風土に規定せられている」と論じています。

続いて沖縄の伝統的な住宅です。

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低く深い軒は日差しを遮り、土葺きの瓦屋根は重い屋根にすることで台風に飛ばされないようにする働きがあります。
この他にも防風林の植栽や家と取り囲む塀が特徴として挙げられ、
これらの住宅では”日差し”と”台風”が大きく影響していることがわかります。

こちらはヤオトン(窰洞)という中国の山西省などで見られる住宅です。
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地面に穴を掘って地下に家を作る形式で、
もともとある地面をくり抜いて空間を作り出すため木や石といった建築材料をほとんど用いずに作られ、
地下の断熱性により夏は涼しく冬は暖かい環境となります。
この地域は雨が少なく、また木や石が多く採取できない地域ということが関係しています。
ポンプなどの排水技術が発達した現代では日本でも地下建築が可能となりましたが、本来このような風土でこそ成り立つ建築形式であると言えます。

イタリアはアルベルベッロのトゥルッリと呼ばれる住宅です。

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石積みのとんがり屋根が印象的で絵本に登場するような可愛らしさがあります。

こちらは純粋に気候の影響だけではなく、当時の社会情勢が影響していると言われています。

17世紀この地域では家屋に応じた徴税が行われており、役人が来ると屋根をすぐに解体することができる石積みの形になったようです。(屋根がなければ家屋ではないと主張できたみたいです。)

このような住まいを風土という視点で捉えたとき、現代のグローバリズムや工業化の流れの中で一般的になりつつある”画一的な住宅”というものに違和感を覚えます。
本来土地が変われば風土が変わります。沖縄や北海道といった極端な気候の差異でなくとも、京都市内の北と南でさえも小さな風土の違いはあります。

気候条件を含めたその土地の風土性を読み解き、建築に落とし込んでいく。
空調設備・断熱の選択以外にも軒や庇の出、建物の向き、窓の配置、仕上げ材や外構。
環境が建物に与える影響とそれを通じて感じる快適さは住まいの質に直結する部分だと思います。

ZENが”標準的な仕様”ではなく1邸1邸に個別の仕様設計をしているのは、その小さな風土の違いを見落とさないためでもあります。