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ブログ 室温と健康

一級建築士ブログ

住宅の室温が健康にどのような影響を与えるかご存知でしょうか。
単純に「暑いな」「寒いな」という問題ではなく、健康に大変大きな影響を与えてしまうことが起こります。

今回は室温が身体に及ぼす影響についてご紹介していきたいと思います。

室温と血圧

室温が低い冬季の住宅では、起床時の血圧が上昇しやすくなります。特に高齢者ほどその影響が顕著に現れます。寒冷刺激によって交感神経が活性化されることにより血管が収縮し、血圧が急激に上昇するためです。これは心筋梗塞や脳卒中などの循環器系疾患のリスクを高める要因になります。

国土交通省が実施した「スマートウェルネス住宅等推進調査事業」では、断熱改修を行った住宅に住む人々の最高血圧が平均3.5mmHg程度低下したという結果が報告されています。これは、室温が安定することで身体への寒冷ストレスが軽減されるため、血圧の変動が抑えられたと考えられています。
また、寒い室内では睡眠の質が低下してしまうことによって、睡眠不足からさらに血圧を上昇させてしまう悪循環を生むこともあります。特に高齢者は寒さに対する感覚が鈍くなるため、寒冷環境に長時間さらされることによる健康リスクが高まります。WHO(世界保健機構)から出されている 住宅と健康に関する新しいガイドラインの中には、 寒い季節に健康を守るためには「冬季最低室温は18℃以上」を強く勧告と書かれており、住宅の断熱性能が健康維持に影響することが明らかになっています。

ヒートショック

ヒートショックとは、急激な温度変化が原因で血圧が乱高下し、心臓や脳に負担がかかる現象です。特に冬場、暖かい居間から寒い脱衣所や浴室へ移動した際に起こりやすく、 65歳以上の高齢者が全体の約8割を占めており高齢者の死亡事故の原因として深刻な問題となっています。


ヒートショックによる死亡者数は年間約19,000人とされており、交通事故死者数(令和6年・約2,600人)を大きく上回る水準です。


このリスクを減らすためには、住宅の断熱性能を高め家全体の温度を均一に保つことが効果的です。実際、北海道など寒冷地では、断熱性能の高い住宅が普及しており、冬季の死亡率が他の地域に比べて低い傾向が確認されています。


■断熱性能の高い住宅による効果

・冬季の死亡率が約15〜20%低下する

・運動量が増加し、睡眠の質が向上するなど、生活の質全体が改善される

・寒さによるストレスが軽減により、うつ病や不安障害の予防にもつながる

まとめ

住宅の温熱環境は、命にもかかわる重要なポイントであるということがお分かりいただけましたでしょうか。寒さによる慢性疾患、温度差によるヒートショックなどは、いずれも住宅の断熱性能の向上と空調設備の整備によって予防が可能になります。

高齢者や子ども、持病を抱える人にとっては、住まいの環境が健康寿命を大きく左右する重要な要素です。これからの住まいづくりでは、「健康への配慮」もしっかり考える事が大切なのではないでしょうか。

このブログを書いたのは…

関 清一郎
・一級建築士
・宅地建物取引士
生まれも育ちも京都市内
趣味はトレイルランニングとロードバイク