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ブログ 杉と桧

一級建築士ブログ

杉と桧

日本の森林には多くの種類の樹木が生育しています。人工林も含めた森林の中で生えている割合のうち、約70%が「杉」と「桧」だということをご存じでしょうか。木といえば頭に浮かぶ「杉」と「桧」、どちらも日本人の暮らしや文化に深く結びついてきた樹木であり、古代から現代に至るまで、建築材や生活用品、さらには精神文化の象徴として用いられてきました。似ているようでいて性質や用途には違いがあり、それぞれが独自の魅力を持っています。今回は、杉と桧の特徴や魅力などをお伝えしたいと思います。

杉の特徴と魅力

杉(学名「Cryptomeria japonica」)は日本固有の樹種で、日本の山地に広く分布しています。成長が早く、まっすぐに伸びる幹が特徴です。木材としては比較的柔らかく、加工が容易で軽量でありながら断熱性にも優れています。そのため古くから柱や板材として広く利用され、一般の家屋から寺社建築まで幅広く用いられてきました。
杉材の魅力として挙げられるのは、きれいな木目と落ち着いた色合いです。赤みを帯びた心材と淡い白色の辺材が美しいコントラストを生みだしてくれます。
香りはヒノキほど強くはありませんが、ほんのりとした木の匂いが心を落ち着かせてくれます。柔らかい材質のため傷がつきやすいという欠点もあるのですが、それを「味わい」として楽しむ方も多いようです。
杉は日本の宗教的な場面でも重要な役割を果たしてきており、奈良県の吉野杉や屋久島の屋久杉などは特に有名で、神聖な木として崇められてきました。屋久杉は樹齢数千年にも及ぶものもあり、その存在をご存じの方も多いのではないでしょうか。人間の寿命をはるかに超えて生き続ける杉は、まさに自然の偉大さを象徴する存在です。



• 日本固有の樹種で、成長が早い
• 木目がまっすぐで柔らかく、加工しやすい
• 軽くて断熱性に優れる
• 建築材としては柱や板材に多用され、寺社建築にも使われる
• 香りは控えめで、落ち着いた印象


桧の特徴と魅力

桧(学名「Chamaecyparis obtusa」)は日本を代表する高級木材として知られています。杉よりも成長はやや遅いのですが、材質は緻密で硬く、耐久性に優れています。特に水に強い性質を持っており、腐りにくく古来より神社仏閣の建築に多用されてきました。伊勢神宮の建築材として桧が用いられていることは有名で、20年ごとに行われる式年遷宮でも新しい桧材が使われ続けています。
桧の最大の特徴は、その芳香です。伐採した直後や加工の際に漂う独特の香りは、清々しく心を落ち着かせる効果があり、アロマオイルや入浴剤にも利用されるほか、防虫・抗菌作用があるので、昔から風呂桶やまな板などの生活用品にも使われてきました。木肌は美しく光沢があり、仕上げ材としても人気があります。桧の床や壁に囲まれた空間は、桧の香りの効果で森の中にいるような安らぎを与えてくれます。



• 日本の代表的な高級材
• 杉よりも硬く、耐久性が高い
• 独特の芳香があり、防虫・抗菌効果もある
• 水に強く、風呂桶や神社仏閣の建材に用いられる
• 木肌が美しく、仕上げ材として人気

杉と桧の比較

杉と桧はどちらも日本人にとって身近な木ですが、その性質や用途にはいろいろと違いがあります。杉は成長が早く、柔らかいので加工しやすいことから、庶民的な建材として広く普及しました。対して桧は硬く耐久性があり、香りや美しさに優れるため、神社仏閣や高級住宅などの特別な場面で用いられてきました。杉は「日常の木」、ヒノキは「特別な木」といった位置づけがなされてきました。
どちらが優れているというわけではなく、杉の軽さや断熱性は住宅に適していたり、桧の耐久性や香りは長期的な使用に向いているなど、用途や目的に応じて使い分けることで、それぞれの良さを最大限に活かすことができるのです。

まとめ

杉と桧は日本人の暮らしや文化に深く結びついてきました。杉は人々の暮らしを支え、桧は神聖な場を彩ったり。どちらも日本人の暮らしに欠かせない存在であることは間違いありません。

このブログを書いたのは…

関 清一郎
・一級建築士
・宅地建物取引士
生まれも育ちも京都市内
趣味はトレイルランニングとロードバイク