ブログ 木の家に住む
一級建築士ブログ
木の家に住む
木が使われている空間にいると、何となく心地良いなという感覚になったことがある方も多いのではないでしょうか。無垢材の床や化粧梁、壁や天井に貼られる羽目板など、木が使われている空間に居ると、自然素材である木材が住む人に癒しや健康効果をもたらしてくれるようです。
今回はそんな木が心地よいと感じる感覚や体に与える効果について、知っていただければと思います。
木の香り
木の香りは癒しや安らぎを感じさせてくれます。森林浴をするのと同じような効果があるようで、これは気分的なものではなく、実際に様々な効果があると科学的に立証されています。
樹木からは「フィトンチッド」と呼ばれる物質が放出されています。フィトンチッドはロシア語で、フィトン:「植物」・チッド:「殺す」から出来た造語で、木が自分自身を害虫などから守るために発散する殺菌作用のある物質です。この効果は製材されて木材として使われても持続します。
そのフィトンチッドの効果とは名前の由来となった殺菌作用の他に、木の香りを嗅ぐことによって副交感神経を優位にして気持ちをリラックスさせたり、血圧の安定や睡眠の質向上などたくさんの効果が知られています。
木は目に優しい
木が落ち着くとか心地よいと感じる効果として、紫外線の吸収や赤外線の反射、光の反射率が関係しているようです。
紫外線は肌にシミを作ったり目を刺激するなど人体に悪影響を及ぼしますが、そんな紫外線を木が吸収してくれるのです。そして青色の光、ブルーライトも吸収してくれるので睡眠の質を高めるメラトニンが分泌されやすくなります。熟睡度が高まるということですね。
赤外線は身体を温める効果があるため、木から反射された赤外線によって暖かさを感じさせてくれます。
人が快適と感じる光の反射率は50~60%と言われています。反射率が高いと白っぽく見えたり眩しく感じたりしますが、木の反射率も快適と感じる50~60%程度です。そして表面の微妙な凹凸により反射を拡散させ美しい光沢や艶を感じさせてくれます。人工物や金属にはない美しさですね。
木が持つ衝撃吸収力
コンクリートなどの堅い床を歩いて足が疲れてしまったことはないでしょうか。これは堅い床が足から受けた力を吸収せずに、そのまま返してしまうからです。
しかし、木材は種類によって違いはあるものの、人が歩きやすいと感じる程良い硬さのようです。
木が衝撃吸収力を持つ理由は、木の構造によるものです。木は細胞が集まって出来ており、衝撃が加わると細胞が変形するのですが、変形してから衝撃をはね返すまでにある程度の時間差があるため、程良い硬さに感じるということです。
床材で使われる木の種類を硬さで表すと、柔らかいものはスギやヒノキ、中程度はナラやオーク、堅いものはカリンやイペなどがあります。
木の調湿性
木には調湿効果があります。周囲の湿度に合わせて水分を吸収したり放出したりしてくれます。その効果によって夏のジメジメ、冬の乾燥をやわらげて過ごしやすくしてれます。木は湿気を吸収すると膨らみ放出すると縮むので、呼吸をしていると言われているようです。
まとめ
なんとなく木っていいな、と感じていたのには理由があったのですね。
木は単に建築材料としてだけではなく、心にも体にも優しい素材であるということを知っていただけたと思います。ある程度メンテナンスする必要はありますが、メンテナンスすることにより愛着も増します。
時を経て美しさと愛着の増した木の家は、住む人を優しく包み込んでくれるのではないでしょうか。
このブログを書いたのは…
関 清一郎 一級建築士
生まれも育ちも京都市内
趣味はトレイルランニングとロードバイク