ブログ 和紙という選択肢
一級建築士ブログ
住まいの内装
住宅の内装仕上げといえば日本の家ではビニールクロスのシェアが高いですが、ZENでは住み手と相談し、調湿作用・耐水性・蓄熱性・意匠性など用途やコストを考慮しながら、他にも木の板を貼ったり、漆喰を塗ったり、タイルを貼ったりと適材適所に様々な素材を選定しています。
クロスや漆喰は採用されることが多くご存知の方も多いかと思いますので今回は和紙という選択肢についてご紹介したいと思います。
和紙と紙づくり
日本に住んでいればTVやNETなどで一度は目にしたことがあるという方も多いであろう和紙の紙漉(す)き。
ただ、意外と原材料が何かを知らない方も多いのではないでしょうか。
和紙で代表的な原料は楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)、雁皮(ガンピ)、ケナフ等天然の植物の繊維。
利用に向いているかは別として、玉ねぎの皮や藁など繊維があれば色んな植物で紙はつくれるそうで、一枚一枚異なる色味や表情の表現される素朴で味のある素敵な材料。
作り方の流れは、
→植物の皮を剥ぐ
→水にさらす
→煮る
→繊維をほぐす
→水やネリ(トロロアオイという植物の根から抽出した粘液)を混ぜて攪拌
→簀桁(すげた)という紙漉きに使うすだれや木の枠を使い繊維を職人の技で絶妙に絡むように漉きとる
→乾燥させる
という工程を経て造られます(大分簡略に書いていますが)。
楮(コウゾ)は1年ほどの期間をかけて植物を育てて刈り取る所から始まるので、相当な手間暇と職人さんの想いが詰まったものづくりであることが分かります。
最近は使用済みの割り箸をリサイクルした紙や、手漉きでなく機械漉きの紙も製造されていますが、日本全国に生産地のある歴史ある伝統産業です。
身近な生産地
和紙といえば、越前和紙(福井県)・美濃和紙(岐阜)・土佐和紙(高知)が有名ですが、京都にも
黒谷和紙(京都府綾部市黒谷町・八代町と、その周辺で生産)
丹後二俣紙(京都府福知山市大江町二俣で生産)
など生産地があり、その技法が京都府指定無形文化財に指定されています。
建築において地元や近隣地域の材を採用するという事は、運送に関わるCO2削減や化石燃料の低減、コストの削減など環境やお財布にも優しい選択。
それだけでなく、伝統産業の技術を遺していくという意味でも大切な事だと考えています。
住宅における和紙
住まい造りの中でも和紙を採用する事は多々あります。
例えば内壁や天井の仕上げ材。
壁紙用に製造された和紙を壁や天井に貼る事で表面に無作為にある繊維質が太陽や照明の光を柔らかに反射しビニールクロスや漆喰などとはまた一味違う落ち着いた空間を演出してくれます。
写真は和紙の壁紙を貼った実例。
和紙と聞くと和テイストにしか合わないイメージをもたれる方もおられますが、和紙といっても様々な表情のものがあるので色々なテイストにあわせられる材料です。
壁紙用に製造されている和紙は撥水加工されているものが多いですが、水や油汚れに対してはビニールクロスと比較してしまうとシミになりやすいというデメリットもあります。
ただ、経年変化を愉しむ事ができ、風合いがある分愛着を感じやすい素材ともいえるのではないでしょうか。
ZENでは和紙に限らず、住み手の価値観や暮らしに合う様々な素材の提案をしています。
家づくりへの想い
住み手と描く丁寧で優しい暮らし
良いものづくりは誰かを想う気持ちから生まれる
贅沢でなくていい
心地よい肌着のような住宅を
HOUSE ZEN
このブログを書いたのは…
花崎哲矢
・一級建築士
・宅地建物取引士
・ファイナンシャルプランナー
生活の中心に猫あり 人目線から猫目線の設計まで