
ブログ 内装の左官仕上げ
一級建築士ブログ
住宅の内装仕上げとしてクロスが使用されることが多いですが、施主様との打ち合わせにより左官仕上げを採用させていただくことがあります。費用的にすべての部分に採用することは難しいので、玄関やリビングなど部分的に採用させていただいています。
左官仕上げの良さは独特の風合い、そして経年変化による表情の変化です。これはクロスでは出せない魅力だと思います。
左官仕上げに使われる材料はたくさんありますが、今回は自然素材でよく採用させていただく2種類をご紹介させていただきます。
材料の種類

自然素材で人気があり、ご存じの方も多い材料といえば漆喰と珪藻土ではないでしょうか。
同じようなものだと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、2つは全く違う材料です。
■漆喰
・主成分
採掘された石灰岩を粉砕して焼成した消石灰が主な原料です。
石灰岩は、サンゴなどの海棲生物の死骸が堆積し海中で長い時間をかけて二酸化炭素を取り込み化石化したものが地殻変動により地上に隆起したものです。
この消石灰に水とつなぎで糊や繊維等を加えて混ぜたものが漆喰になります。
・歴史
漆喰の起源は5000年前のエジプトと言われていますが、日本に建築材料として伝わったのは飛鳥時代で仏教とともに伝来しました。
・特徴
施工後に水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素を吸収しながら硬化(化学反応)していきます。
PH値12という強いアルカリ性のためウイルスが生存できない環境で、高い抗菌性能を持っています。壁の表面は硬化が進んでいく過程で中性化されていくので、手で触れたりしても全く問題はありません。
■珪藻土
・主成分
藻類などの植物性プランクトンの死骸が堆積し、長い時間をかけて死骸の有機物が分解され、外殻(細胞壁)だけが残って化石化したものです。細胞壁を構成していた二酸化ケイ素が珪藻土の主な構成成分です。
・歴史
2000年前のギリシャで軽量レンガの原料として使用され、日本では江戸時代にかまどや炉を作る材料として使用した記録が残っています。
・特徴
珪藻土は非常に細かい穴が無数にあいた多孔質な材料で、この穴が空気中の湿気を吸放出する効果を持っています。

どちらが良いの?
・質感
珪藻土の方が粒子が荒く仕上がりはザラザラした感じになり、粒子の細かい漆喰はツルっとした仕上がりになり耐久性もあります。好みが分かれるところですね。
・調湿効果
どちらも空気中の湿気が多いときには湿気を吸い込み、乾燥しているときは湿気を放出する調湿力に優れた材料ですが、多孔質な珪藻土の方がより調湿力に優れているようです。一般的に1.5倍程度とも言われることがありますが、製品によって調湿力は異なります。
・消臭効果
この効果もどちらの素材も備えています。
珪藻土は多孔質構造による吸着効果で消臭してくれます。調湿力と同じく珪藻土の方が吸着効果は高くなります。
漆喰の吸着効果は調湿効果と同じく珪藻土には劣るのですが、強いアルカリ性による抗菌作用を生かし複合的に消臭をしてくれます。汗臭や靴のにおいに強いとされているので、玄関に使用するのが良いかもしれません。しかし、漆喰は年月が経つと少しずつアルカリ性から中性へ変化するので、抗菌作用の効果は低下してしまいます。
まとめ
どちらの素材も似た効果を持っています。質感が好きだからこの素材を選ぶというのも間違いではありません。家と共に長く付き合うものですから、経年変化とともに変化する表情を楽しみ、愛着の湧くものを選びたいですね。
