見学会・イベント お問合わせ 資料請求

ブログ 家族とペット

一級建築士ブログ

ペットと暮らす

ペットを愛する人たちにとってはペットは家族同然の存在です。
くつろぎの時間をともに過ごし、お出かけして、一緒に成長していく。そのようなペットたちとの暮らしがかけがえのない時間になるようにZENではペット自身が暮らしやすくなるような、人とペットの関係がよりスムーズになるような家の設計を心がけています。今回はそんな人とペットの関係を少し振り返ってみましょう

実用動物としてのペットたち

ほんの20年30年前までは犬や猫は外で飼うことが当たり前でした。歴史を遡ると戦後、犬は番犬、猫はねずみ捕りというそれぞれの仕事があり、その上で人に飼われるという存在でした。つまり牛や鶏のように実用動物のようなものとして捉えられてきました。(宇都宮, 1999)現在のペットのように家族としてただ愛されるというものではなかったのです。もちろんペットが大好きで家族のように思っていた人もいたでしょうが家の中で暮らし、くつろぎ眠るペットたちは少数はだったと言えるでしょう。特に日本の住まいは玄関で靴を脱ぐという形になっているので、靴を履いていないペットたちを「土足のまま」家にあげることに抵抗感があったのかもしれません。(奈良女子大学住生活学研究室, 1993)

「仕事」から解放されるペットたち

しかし時代を経る中で少しづつ家の中で暮らす犬や猫が登場してきます。明確な理由はわかりませんが、要因の一つとして考えられるのは小型犬種が飼われるようになってきたことです。チワワなどの小型犬はそもそも番犬としては心もとない存在です。つまり小型犬が飼われるようになってきたということは犬が番犬ではなくなりつつあった事を示しています。また住宅環境が向上したことでねずみ捕りを猫に頼る必要もなくなっていきます。(宇都宮, 1999)
こうして2000年代入ると(犬の)室内飼いが室外飼いを上回るようになります。(東海林, 2018)
この頃にはペットは実用動物ではなく単に可愛がられる存在になってきます。
さらには単に室内で飼うだけではなく、ペットたちを家族の一員として認め、人もペットも暮らしやすい環境を整えようと考える人が多くなっています。

暮らしやすさの視点で

人がペットと暮らす家を計画する時、どうしても人間目線やヒトの習性を元に考えてしまいがちですが、それぞれの動物ごとに習性が違うという事は最低限理解して考えてあげることが一緒に住む人の責任。生活のしやすさや安全性など本人に聞けない分、尚更のこと、しっかり考えておく必要があります。
ドアの近くで人の行き来が多い場所に作った落ち着かない犬用ベッドスペースや憧れで作った安全性への配慮がされていないキャットウォークなど、大切な家族であるペットがストレスを感じる事例をよく見かけます。ペットも人と同じで家族と一緒にいたいときもあれば一人で籠って落ち着きたいときもある。家族がもう一歩踏み込んでペット目線で考えてあげる事で共に過ごしやすい空間はつくれます。
それらの内容を考慮した家づくりをするにあたり間取りや仕様を検討する前に、住み手と設計士で時間をかけてお話しをします。想定する家族構成、現在の生活スタイル、そしてこれからペットとどんな暮らしをしたいか。それは住宅の設計は〇LDK+水廻りという単純な箱を作る作業ではなく、住み手ごとに違う生活スタイルや生活動線、生活時間の違いによる音への配慮など、お話しすることでしか実現できない心配りに満ちた生活の場を創っていくものだと考えているからです。
ZENでは清掃性にも配慮した上で、人とペットのより良い共生の為の空間造りを提案しています。

このブログを書いたのは…

石田 大喜 
・一級建築士
・構造設計一級建築士
・中小企業診断士
・宅地建物取引士
・京都市文化財マネージャー
只今3人の子育てに奮闘中。

参考文献

■ 宇都宮直子 (1999), 『ペットと日本人』,文春新書
■ 尾崎裕子 (2004),「ペット飼育の規定要因ー日本版総合社会調査マイクロデータを用いてー」,『生活経済額研究』No.19, (社)日本家政学会家庭経済学部会
■ 東海林克彦 (2018), 「ペット共生マンションのガイドラインに関する考察」、『観光学研究』, 第17号, p.23-37
■ 奈良女子大学住生活学研究室 編 (1993), 『住生活と住教育ーこれからの住まいと暮らし方を求めてー』, 彰国社