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「熱を断つ」と書いて断熱 -Part4-

一級建築士ブログ

断熱等性能等級は高い方が良い?

-Part1-からの続き。
-Part2-からの続き。
-Part3-からの続き。
断熱性の向上によるメリット デメリットがいろいろあると思いますが、どんなことがあるでしょうか。

メリットとしては…
・快適な室温を保ちやすい
・冷暖房のエネルギー消費量を抑えることができる
・熱中症・ヒートショックを防げる
・健康改善効果が期待できる
など、いろいろと考えられるので高くしていきたいところです。

しかし、断熱性能を上げるわけですから建築費用が高くなってしまうというデメリットもあります。

高断熱化による健康改善効果

もう一度、高断熱化による健康改善効果の表を見てみましょう。
ほぼ無断熱の住宅から緑で囲った次世代省エネ基準レベル等級4まで上げると、健康改善効果が期待できます。赤で囲った北海道における次世代省エネ基準レベルまで上げると、さらにかなりの健康改善効果が期待でることが示されています。緑・黄・赤の点線部分これを等級の表にあてはめてみますと。 

緑・黄・赤の点線部分、これを等級の表にあてはめてみると等級4・5・6のところに当てはまってきます。 
緑が4 黄色が5 赤が6 ですね。
健康改善効果の表を見ると出来れば等級6あたりの性能が欲しい所なのですが、建築費用が高くなるしな…というところが気になってしまいます。

断熱性能を高める為には

建築費用の前に、住宅の断熱ってどうなってるのか見てみましょう。
住宅は断熱材にぐるっと覆われています。足元は床または基礎、横は壁、上は天井または屋根の部分です。面積が一番大きい壁の部分を、よく使われる断熱材のグラスウールの場合で見てみましょう。等級4と等級6の比較です。等級4ではグラスウール単体で高性能16Kの90mm程度を使用し、U値が 0.45。これを高性能24Kの105mmにするとU値は0.39です。15%ちょっと性能が上がりました。一般的な住宅の柱は105mmなので、内断熱としては入れられる最大の厚さになります。数値をよく見ると、等級4のグラスウールがU値0.45で等級6の基準をクリア出来そうと思われるかもしれませんが…住宅の壁には窓が付いています。窓のUA値を見てみましょう。壁のグラスウールに比べてUA値がかなり大きいです。アルミサッシで 一般複層ガラスなら、UA値は4を超えています。窓って断熱にとって重要なポイントになりそうですね。窓を無くせば断熱性能が上がるのか…そういう訳には行きませんね。快適な暮らしの為には通風や採光は必要です。高断熱タイプの樹脂サッシにすればUA値は 1/3程度になり、断熱効果は期待できます。
このように材料を変えることによって、建物の断熱性能を上げていく事がことができます。建物の断熱性能を上げたとき、大切なことがありますのでご紹介します。

気密と換気も大切

気密と換気です。
せっかく断熱性能を上げても隙間風が入ってきては効果がありません。ドアやサッシだけではなく、建物全体の気密性能を高めてやる必要があります。しかし、気密性を高めることによって起こる可能性があるのがカビや結露です。密閉性が高くなってしまうため、湿度の高い空気が停滞しカビや結露が発生することがあるようです。本来住宅は汚れた空気を追い出してきれいな空気を取り入れるように換気の計画がされています。2003年の建築基準法改正により、24時間換気の設置が義務化されており、1時間に0.5回家の空気が入れ替わるように計画されています。計画通りに換気されているといいのですが、フィルターが詰まっていたり換気扇のスイッチが切られていたりすると、計画通りの換気が出来ずにカビが発生したり結露する可能性があります。しっかり24時間換気を活用することによってそれらのリスクを減らすことができるようです。換気は外から新鮮な空気が入ってくるところと、内部の汚れた空気を排出するところがあります。気密性能が上がり隙間風が入ってこなくなると、給気と排気が計画通りに行われるようになり、効率よく換気が行われるようになります。

建築費用が高くなる?

建築費用が高くなる?というところが気になりますね。断熱性能を高めても、単純に建築費用が増額するだけではないようです。断熱材を強化してサッシを高性能なものに変える費用の増加分から、冷暖房費の削減が期待できる分を差し引きできますので、単純に建築費用が増額するわけではありません。建物の大きさや形状などによって変わってしまうのですが、ある試算によると等級4程度から等級6程度への変更と気密にかかる費用がざっくり100万円、削減できる冷暖房費用が年間に約5万円程度と言われています。おおそ20年ぐらいで回収できるわけですね。この計算には冷暖房器具本体の削減費や高性能な住宅を対象とした補助金、健康改善によって削減できる医療費は含まれていませんので、実際にはもっと早く回収できそうです。十分に費用対効果が見込めそうですね。

まとめ

今回は 「熱を断つ」と書いて断熱 -Part4- 最終回
・断熱等性能等級は高い方が良い?
・高断熱化による健康改善効果
・断熱性能を高める為には
・気密と換気も大切
・建築費用が高くなる?
以上についてお伝えしました。
断熱性能を上げることで建築費用は上がりますが、費用対効果が見込めるようです。
健康に暮らすためには家の断熱についてもう一度考えてみましょう。